【書評】『「トヨタ式」大全』若松義人(著)・PHP文庫
【トヨタの全てがここにある】
本書はトヨタの代名詞である「トヨタ生産方式」や様々なトヨタの強さの源泉を一冊の本にまとめたという大作である。
一つひとつの内容はもちろん薄くなるのだが、192項目にも渡っているためやむを得ないだろう。
むしろ192項目もよくまとめられたなというのが正直なところだ。
本書の内容を簡単に説明すると、
第1章は「改善」についてであり、「ムダとは何か?」からはじまるトヨタの世界を制した改善をくまなく知ることができる。
第2章は「行動哲学」についてであり、「ジャストインタイム」や「かんばん」などの有名な言葉が並ぶ。
第3章は「習慣」についてであり、91項目項目にも及んでいる。全体の約半分をこの「習慣」にページを割いていることからも重要性がよくわかるだろう。
第4章は「トヨタ力」についてであり、仕事の中でも人的なところに焦点がしぼられており、リーダーシップなどが体系化されている。
最後の第5章は、トヨタを創った先人たちの人生をまとめたものであり、トヨタの歴史を学ぶためのものである。
このように、トヨタの全てが一冊にまとめられているといっても決して過言ではない。
本書を読んで詳しく知りたい内容については、他にトヨタに関する本はたくさん発売されているのでそちらを追加で読んで知識を血肉化するという方法をとるのが効率的だと思う。
最後に、僕がこの本を読んで、ためになった箇所や心に響いたところを順不同でまとめておくので参考にしていただければと思う。
【本書でためになった箇所と心に響いたところ】
「『ムダ取りは一生の仕事』常にムダに気づき、ムダを省く。この『続ける力』こそがトヨタ式の強さの源泉である」
「清掃には、働く人たちの心を変える力もある」
「できそうにない目標を立てる。できそうな目標だと、さほど知恵を出さなくとも達成できてしまうことがある。それに対し、できそうにない目標だと、これまでのやり方をゼロベースで見直す必要があるからだ」
「トヨタ式の『人を抜く時は一番できる人を抜け』は、間接部門に限らず、人を育てる最も大切な鉄則の一つといっていい」
「現地現物こそがトヨタ式の基本的姿勢」
「大切なのは『自分の仕事が不要になるほどの改善』を続けることである。みんなができる仕事へと変えていくのが改善なのだ」
「改善は知恵とお金の総和である」
「標準があるから改善か改悪かわかる」
「会社を安泰に保つには『二兆円は必要だね』」
「当然儲かる事業を当然な方法でやっていくよりも、誰もあまりやらない、またやりがたい事業をものにしてみせるところに人生のおもしろみがあるものです。できなくて倒れたら、自分の力が足りないのだ。潔く腹を切ったらよいではないか。できるところまでやってみよう。どうせやるなら、世人の一番難しいという大衆自動車をつくってみよう。そういう立場から、やりかかったのです。」
「運というも、ツキというも、単なる偶然ではない。いつでもそれを迎え入れる体制が整えられていての運であり、ツキであるといえる。これは事業の場合でも、個人の場合でもまったく同じことのように私は思う」
「トヨタ式の歴史とは結局は『日々改善、日々実践』をやり続ける歴史でもあった」