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【書評】『セレンディピティの探求』澤泉重一・片井修(著)角川学芸出版

 
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【セレンディピティの定義と本書の内容】

本書はセレンディピティの解説本となっているのだが、まずはセレンディピティとはなんぞやというところから確認していこう。

著書ではセレンディピティをこう定義づけしている。

偶然と察知力によってあてにしないものを発見する才能

言い換えると、「偶然性が創り出す所与条件の中でどれだけ有効な関係に気づくことができるか」ということになる。

ポイントは「偶然性」と「察知力」ということになるだろう。

本書の内容としては、セレンディピティの概念、偶然性と察知力についての意義、そしてセレンディピティの具体的な実践である仮説立案と情報収集などとなっている。

本ブログでは本書で紹介されている「セレンディピティカード」とセレンディピティの実践である「仮説立案」と「情報収集」のところを中心にまとめておくことにしよう。

【セレンディピティの実践~セレンディピティカード・仮説立案・情報収集~】

「セレンディピティカード」

本書ではセレンディピティの実践としてセレンディピティカードと名付けた名刺サイズの外化する記録用紙を活用することを進めている。特徴や使い方については本書でご確認いただきたい。偶然性と察知力を具現化するには体系化されたメモが一番よいということだろう。

「仮説立案」

仮説を立てる意義は数多くあるが、セレンディピティ的観点から以下のように著者は考えている。

第一に仮説立案が個人にとっての発見であり、ものごとの創造的理解につながります

第二に、仮説を立てることによって偶然の発生頻度が向上することです

第三に、仮説を発表することにより、関連する情報が持ち込まれるという偶然が生じてきます

僕たちが課題意識をもって、ものごとを見るときは、成り行きだけで見ているときと比較して、あきらかに記憶に残ることがわかっている。したがって、偶然と感じる関連性も、仮説を立てることによって機会を増やすことができるということだ。

「情報収集」

情報収集をセレンディピティ活用の観点で考察するといくつかの要点があげられると著者は本書で語っている。

第一には、言い古されたことではありますが人との出会いです。文化の異なる人との出会いは、弱い絆の観点からもとくに大切にしたいものです

第二には、簡単なファイナル・システムをつくり、いつも手軽に収集できる準備をしておくことが大切です

第三には、情報の収集する時点で、自分自身の仮説に否定的な情報に注目することです。肯定的な情報ばかりでは、かえって特徴がわかりにくくなります

第四には、情報概念の内包的構造要素と外延的構造要素の形式概念分析的な展開を進めることです

第五には、臨場感のあるところで情報を理解することです。現場主義に共通することですが、現場における情報量は文章化されたものと比較すると圧倒的に多く、有用です

偶然性と察知力は情報量に比例することを示している。ぜひ参考にしていただきたい。

【セレンディピティを味方に】

本書は偶然を察知し新しいものを発見するという漠然とした概念を言語化したものである。

本書には独創性を養う例として、Googleの「20%ルール」を取り上げている。

これは組織の上が指示した以外の企業目的の業務に時間の20%をつぎ込むように社員に義務づけているものでGoogleの企業文化とされている。

このようにその他の具体例も豊富に取り上げられているのでセレンディピティという概念の全体を整理するには良い本であると思う。

偶然そうなることに対して僕たちは無防備である。

それを察知できることは僕たちに大きなメリットと成長を生み出すだろう。

是非、一読してみて欲しい。

【さらに理解を深めるために】

『超ロジカル思考』高野研一(著)日経ビジネス人文庫

『アイデアの天才』藤由 達藏(著)ぱる出版

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