【書評】『名字のいわれ・成り立ち』大野敏明(著)・実業之日本社
【本書の読みどころ】
日本には三十万近い名字があるとみられており、世界一である
こんなにも多いのには理由があり、日本においては「一所懸命」という言葉もあるとおり、その土地に対する執着が高い民族であり、自分の土地であるという区別のために多くの名字ができたと言われている
また、日本の歴史とみても、武士の世界には「氏」「本姓」「幼名」「通名」などが混在していたのも理由とみられている
そして、日本人の名字の大方が地名から付けられており、その都道府県の特色を探るのが本書である
本書を読んだらわかるが、地名については詳細な調査を行っており、膨大な資料と格闘したことが読んでいるとわかる
それをわかりやすくまとめ、整理している本書は価値がある
また、私の勤めている会社は全国転勤がある会社であることから、日本全国の出身地の方と仕事をすることも多く、名字はコミュニケーションツールとしても使える
そういった意味でも、日本の名字の歴史と実態を知っておくことも面白いと思う
最後に本書を読んで気になった名字の面白ネタをいくつかご紹介して本書の書評に替えさせていただこう
1.中村姓は全国にほぼ均等に広く分布している名字
「わたしが中村です」と言われても、いったいどこの出身かを当てることはまず不可能
2.青木は難しい名字?
古代から日本の色の形容詞は「赤い」「白い」「黒い」「青い」の四つしかない
その「青い」は、赤でも白でも黒でもない色が、古代の青と言われており、明確なブルーではない
そういうよく分からない色の木が青木ということになる
3.大阪府は改名されたもの
もともと「大阪」は「大坂」という表記が明治二年まではされていた
しかし、「大坂」の「坂」の字が「土に返る=死ぬ」につながるとも読めることから、「坂」を「阪」に変えて「大阪」とした
そのほか、各県にある固有姓なども多く記載がされており面白いので読んでみて欲しい