【書評】『多様性の科学』マシュー・サイド著・ディスカヴァー・トゥエンティワン社
多様性を正しく理解する
現在、「多様性」という言葉は使い古されてきた感があるほどその重要性がピックアップされている
しかし、多様性は何となく意味はわかるが具体的にどんな状態が多様性なのかはっきりしない読者も多いと思う
その問いに科学的に答えてくれているのが本書である
本書では多様性は単に様々な人がいるだけを指すのではないこと、多様性があってもそれを活かすことができず、逆に多様性を失わせることもあることを教えてくれる
知れば知るほど難しい
僕自身も多様性の重要性は認知している
しかし、本書を読むと人間には様々なバイアスがかかっており多様性を活かしていくのは非常に難しいことだと思った
極端にいえばバイアスが無意識にかかっており多様性を否定している場合もあるということだ
例えば、本書では人の物事のとらえ方には、ただものを見るという単純な行動にさえ文化に基づく違いがあるという事実があると指摘している
“アメリカ人と日本人は、異なる「枠組み」で物事をとらえる。アメリカ人のものの見方は、もちろん個人差はあるものの、おしなべて個人主義的だ。一方日本人は、より背景や状況を考慮する。どちらの枠組みも有益な情報に関心を向け、どちらの枠組みも重要な要素を拾い出す。その反面、どちらの枠組みにも盲点があり、全体像を描き切れてはいない”
本書はその多様性を阻害してしまう原因を様々な事例を取り上げ、科学的に掘り下げている
それを理解することにより、自分にも無意識に多様性を否定していることが理解でき改善に向かうことも可能だろう
多様性を大事にしていると思っている方にこそ読んだ方が気づきが得られると僕は思う
チームの多様性
もう一つ本書で大変学ばせてもらったのが多様性のあるチームとは何かという問いだ
現在は企業でも多様性のあるチーム、組織を作ることがイノベーションにつながり、企業のコアコンピタンスの一つとなりえることは認識されている
しかし、多様性のあるだと思われたのが実は多様性を否定してしまう場合があり逆に生産性が下がることもある
それを本書では、「無知な集団」「賢い集団(反逆者の集団)」「多様性はあるが無知な集団(根拠のない人選)」の3つに分けて解説しており、非常に勉強になった
現在はどの業種でも個人で仕事をすることはほとんどなく、ほとんどの場合何かしらのチームに属している場合が多い現代では本書の多様性を学んでおくことは非常に大切だ
多様性を知り、多様性を活かす
本書は多様性に関しての重要性を認識させ、様々なところで活かしていくことを推奨している
これからは更に多様性の重要性は増してくることは確実だ
姉妹書である『失敗の科学』と共に読む価値は大きい
ぜひどちらも読んでみることをお勧めする