【書評】『失敗の科学』マシュー・サイド著・ディスカヴァー・トゥエンティワン
失敗に対する考え方を根本から変える本
今回は有名な著書である、『失敗の科学』を取り上げようと思う
失敗についての深い考察と、それを乗り越える方法を科学的に解き明かした名著である
この本の良さはいくつもあるが、我々読者にとって非常にイメージしやすい事例を多く取り上げており、まるで自分のことを言われているような錯覚をしてしまうところが素晴らしい
失敗の事例を自分事として捉えることができるため、その失敗の原因とそれを解決する方法を受け入れやすく、自分の行動を変革するのに最適の本である
人はなぜ失敗を認められないのか~認知的不協和
この本は大きく2つのパートに分けられている
一つはなぜ人は失敗を受け入れ、認められないのかの考察であり、keywordは「認知的不協和」である
「認知的不協和」とはフェスティンガーが提唱した概念であり、
“自分の信念と事実とが矛盾している状態、あるいはその矛盾によって生じる不快感やストレス状態を指す”
と定義されている
具体的に「認知的不協和」に対する反応として次のような例が挙げられている
“人は自分の信念と相反する事実を突き付けられると、過ちを認めるよりも、事実の解釈を変えてしまう。次から次へと都合のいい言い訳をして、自分を正当化してしまうのだ。ときには事実を完全に無視してしまうことすらある”
さらにこの「認知的不協和」の恐ろしい所は、無意識に反応してしまっている場合もあり自分でも気づかないことがあるということだろう
筆者も本書の中で、人は自分の信念にしがみつけばしがみつくほど、相反する事実を歪めてしまう、努力が判断を鈍らせ、自尊心が学びを妨げると指摘している
筆者は言う、
“バイアスからは誰も逃れられない”
考えるな、間違えろ
この「認知的不協和」を解決する方法として、「適切なシステム」と「マインドセット」を筆者は挙げている
詳しい内容は本書に譲るが、簡単にいうと失敗を積極的にしなさいということだ
失敗を当然のこととして受け入れることにより「認知的不協和」からの脱却を図ることができると指摘している
さらにもっと重要なことがある
それは、失敗をしない限り正解がわからないことが世の中にはたくさんあるという事実だ
失敗したくないという考えでは絶対に正解に辿り着くことができない、辿り着く唯一の方法は“積極的に失敗すること”だけなのだ
組織でも個人でも失敗を寛容に受け入れ、それを成長の糧にする考え方の重要性を本書は教えてくれている
積極的に失敗しよう
本書を読むと失敗に対する考え方が変わる
特に日本人は間違うのは恥ずかしいことだと考える人が多いと思うので、そういう方々にはぜひ読んで学んで欲しい
そして積極的に失敗する人を受け入れ、失敗を賞賛できる社会を作っていきたいと思う
“我々が最も早く進化を遂げる方法は、失敗に真正面から向き合い、そこから学ぶことなのだ”