【書評】『悪魔の傾聴』中村淳彦著・飛鳥新社
悪魔と呼ぶにふさわしいコミュニケーション力を持つ筆者が贈る、独自の世界観を味わう本
この本は、まずまえがきからして雰囲気が違う
“人間関係に変化が起こる危険なスキルなので、
筆者は、すでに良好な人間関係がある友人知人を相手に、
悪魔の傾聴を使うことをは封印しています。”
と語っている
そして、筆者のプロフィールがまた一味も二味も違う
[ノンフィクションライター。AV女優や風俗、介護などの現場でフィールドワークを行い、貧困化する日本の現実を可視化するために傾聴・執筆を続けている]
とのこと
これだけ読んでもかなりディープなコミュニケーションを重ね続けてきていることは推察できるだろう
本の内容も想像通りディープであり、生々しい事例が多く、一般のコミュニケーションとは異質な本である
だが、極端であるからこそ真のコミュニケーションとは何のかを考えさせられる良本である
コミュニケーションが苦手な人から上級者まで学べる本
この本は具体的な事例で話を進めているので、難しい内容もかみ砕いて説明してくれており、わかりやすく伝えたいという著者の意志が感じられる
しかし、このコミュニケーション力を身につけるには相当な量の訓練と反復が必要だとすぐに気がつく
筆者の傾聴に対する敬意と覚悟を感じて欲しいと思う
この本から学んだこと(抜粋)
『否定しない。比較しない。自分の話をしない』
著者はこれらの行為を「HHJの三大悪」と呼んでいるくらい、絶対にしてはならないこととして指摘している
これって無意識にやってしまっている場合もあるので、相当な意識と訓練をしないといけないと感じた
この本はこの3つをやらないようにするにはどういう考え方や心構えでいればいいのかを説明している本といっていいと思う
筆者も悪魔の傾聴は、
“相手に対して「~をしない」不作為の技術が中心です”
と話している
こちらから積極的に働きかけるコミュニケーションはうまくいかないということを教わった
『欲望の断捨離』
相手の話を深く聴く、悪魔の傾聴では自分の欲をどこまでなくせるかに焦点を当てている
その中でも気をつけたい自分の欲をいくつかわかりやすく説明している
僕が感銘を受けたのは、
『困っている人を助けたいという思いも、欲望であると自覚せよ』
である
人のためになりたいというのもそれは自分の欲であり、相手の傾聴に対しては足かせとなることもあるということは非常に勉強させていただいた
コミュニケーションの本質を説いた良書
このようにかなり深いところまでを丁寧に書いている本のため一度目を通していただくことをお勧めする
また、本を読み終わって、この中村さんに実際会ったらどんな人なんだろうと非常に興味が湧いた
専門的な話も多くとっつきにくい文章ではあると思うが、どんなことでも一つのことを広く・深く考察しているこの本は素晴らしいと思う
コミュニケーションの神髄は傾聴にあり