【書評】『戦略読書[増補版]』三谷宏治(著)・日経ビジネス文庫
【人の精神は読むものからできている】
本書は読書にも戦略が必要であることを提案し、その具体的な方法をまとめたものとなっている。
なぜこのような本を書いたのかというと、みんなと同じ本を読んでいたら、みんなと同じことを言うようになった苦い経験からきている。
著者はその時の経験をこう語っている。
「人の体が食べるものからできているように、人の精神は読むものからできているのだ、と理解しました」
その経験から、自分の独自性をつくりあげる読書が必要であり、「戦略的な読書術」が必要であるというのうが著者のこの本を書いた理由だ。
【読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM)で読書を分類する】
本書の肝となるのは「読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM)」である。
2×2のシンプルなマトリクスであり、マーティングの基本でもある「プロダクトポートフォリオ・マトリクス(PPM)」のフレームワークを使ってわかりやすくまとめてあるのが特徴だ。
2×2の軸は本を「ビジネス系」か「非ビジネス系」か、そして「ビジネス応用」か「非ビジネス応用」かで4つに分類し、そのポートフォリオで戦略的に読書をしていこうとするものである。
この読書ポートフォリオを「社会人になりたての方」「社会人4年目まで」「社会人10年目まで」そして「キャリアチェンジ準備期」の大きく4つに分けて、どのジャンルの本をどの程度の比率で読むのかまで解説されている。
本ブログでは「読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM)」に対するそれぞれの項目をもう少し詳しくみていくことにしよう。
【読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM)について】
①「ビジネス基礎」ー仕事界を支えるカメ
今関わっている仕事の基礎を固めるための読書領域であり、テーマごとに1~2冊でいいので、古典的大著をとにかくじっくり読むことが重要
1冊当たり10時間以上かかっても構わない。すべての基礎になるので、読破するまではこれらに集中する。ただし10冊を超えないこと。ビジネス小説は、厚みにより何冊でも適宜
②「ビジネス応用」ー仕事界を跳びはねるウサギ
基礎ができれば応用の修得は簡単です。理解そのもは難しくないでしょう
主要テーマごとに『全史』ものが、出されるようにもなってきたので、そこで基礎の確認をすると同時に、紹介されている書籍(や論文)から、そこでの応用本を選んでもいいでしょう
1冊当たりどれくらいかけるか最初に見極める。じっくり全体を読む価値のある本か、事例・データなどの情報収集に留める本か。後者なら1~2時間で済ませる。フレームワーク本は本気で取り組むのを厳選すること
③「非ビジネス基礎」ー自然と人間界を翔るリュウ[SF・科学もの]
今関わっているビジネスから、離れた分野での学びを欠かしてはいけません。この世は仕事だけで出来てはいませんし、自らをコモディティにしないための学びの源泉は、仕事以外のところにこそあります
この分野は自然やヒトの本質を描こうとしている本なら、何だってOKです
自分が楽しめる本を、ビジネス系とのバランスでどんどん読む。1冊当たりどれくらいかけるかは、自由
④「非ビジネス新奇」ー新しい世界へ誘うトリ
自分にとって、世の中にとって、「新奇」なものをあえて選んで月1冊は読みましょう
いつもなら読まなそうなもの。読むか読まないかも判断しかねるもの、見たことも聞いたともないものとなります
この4つの分野を自分の目的に沿ってバランスをとって読んでいくことをおすすめしており、その具体的方法を詳細に解説されているので本書で確認してみて欲しい。
【戦略的に読書をすることを体系化したものでは本書の右に出るものはない】
本書は読書を自分の人生に沿って戦略的に読むことを体系化したものである。
内容もさることならがら、おすすめ本も多数掲載されているので(特にSFなどの非ビジネスの分野は特筆すべきものだ)、おすすめの本をまずは手始めに自分の人生の1冊に出会って欲しいと思う
また、「学問ジャンル外観マップ」など資料やデータに関しても価値のあるものが多く読書好きでも十分学べる内容となっている。
もっと本を読みたいと思っている方や、今の仕事で具体的にどのような本を読めばいいのかわからない方には最良の本だと思う。
是非、一度目を通してみて欲しい。
【さらに理解を深めるために】
『読書の全技術』齋藤 孝(著)中経出版