【書評】『政治思想マトリックス』茂木誠(著)・PHP研究所
【世界の政治思想の基礎知識】
本書は世界の政治思想を学ぶ本となっている。
思想を知ることは非常に重要である。
なぜならば人間は考えていることで出来ているからだ。
世界の思想をしっかりと学ぶことで、歴史上の出来事や現在起こっていることの理解がしやすくなる。
歴史を学ぶ前提としてこの思想史を学んでおくことをおすすめする。
本ブログはその中でも僕が読んで腑に落ちた「資本主義」の始まりについてまとめさせていただき、本書の書評に替えさせていただく。
【イデオロギーとしての資本主義のはじまり】
それでは政治思想として資本主義はどのようにはじまったのかをみていこう。
政治思想として資本主義が産声をあげたのは16世紀。「宗教改革」と関係がある。
「当時、ローマ教皇を頂点とするカトリック教会の堕落が問題になっており、協会の聖職者は信徒から寄付金を強要し、「免罪符」なるお札を購入すれば罪が許されると説教していました。
そうした教会の姿勢をドイツのルターやスイスのカルヴァンが公然と批判して支持者を増やし、やがて大きな渦となって西欧全体を巻き込んでいきました。
従来のカトリックに反対する彼らは「新教徒」とか「プロテスタント(抗議者)」などと呼ばれました。」
現在でもキリスト教は大きく、「カトリック」と「プロテスタント」に分けることができる。
それではこのカトリックとプロテスタントの思想はどのように資本主義に結び付くのか?
続きをみていこう。
「最も先鋭的な教えを解き、その実勢を重んじたのがカルヴァン派です。禁欲を重んじ、「一生懸命に働くことこそが神のご意思である」と考え、協会で祈るだけではなく、日々、神と向き合い、自分の仕事を真面目に頑張ることを奨励したのです。
カトリック教会は、「勤労と蓄財は罪」というスタンスでしたから、まさに真逆。新教徒たちは酒もタバコもやらず、贅沢もせずに、ただがむしゃらに働きました。」
カトリックは「勤労と蓄財は罪」でプロテスタントは「勤労を推奨し贅沢は罪」という同じキリスト教でも全くことなる思想ができたことになる。
しかし、プロテスタントには一つだけ問題があった。それは「贅沢をしてはならない」ということだ。
どういうことかみていこう。
「(プロテスタントが)一生懸命に働いたら、どうなるのでしょうか?
当然のことならが、お金がどんどん貯まります。ですが、そのお金を使って贅沢をすることは禁じられています。
ただ一つだけ、お金の使い道が存在しました。それが「投資」です。カルヴァンは、禁欲を続けて「そのお金をまた仕事に投資すれば問題ない」と主張しました。
一生懸命働いてどんどん投資をすることが、神のご意思に叶う
こうしてカルヴァン派の人々は、懸命にお金を稼いでは、新たな事業に投資を行い、さらにお金を増やしていったのです。
一見、対極にあるように見える「宗教とお金」がこうして結びつき、富が富を生むという再生産が行われるようになった。これが、イデオロギーとしての「資本主義」の始まりです」
貯まったお金の使い道として「投資」が推奨され、「資本主義」ができた。
現在もそれは続いているが、キリスト教が世界でもっとも多い信者を持っていることからも「資本主義」の思想としての強さをご理解いただけると思う。
そして、世界で最も多いプロテスタントがいるのが超大国アメリカである。
アメリカが現在世界1位の経済大国である母体はプロテスタントにあるのだ。
【思想を知れば世界がわかる】
いかがだったろうか?
思想史を勉強する面白さがご理解いただけたのではないかと思う。
思想史の本は多くあるのだが初心者の方にもわかりやすく、かつ体系的にまとまっているのは本書が最もおすすめできる。
著者は駿台予備校の世界史の担当とのことだが、改めて予備校講師のレベルの高さに感服した。
本書を読めばそれも感じていただけると思う。
是非手に取って読んでみて欲しい。
【さらに理解を深めるために】
『日本思想史マトリックス』茂木誠(著)・PHP研究所