【書評】『文章作法辞典』中村明(著)・講談社学術文庫
【日本語を勉強する】
ブログの書評をはじめてもうすぐ1年がたつ。曲がりなりにも毎日文章を書いていると、イメージしたような文章がうまく書けなかったり、語彙力のなさに愕然としたりする。
僕たちは文章を書くことに対してほとんどまともな教育を受けることはない。
文章は個人のセンスや才能も大きな比率を占めていることを受け入れた上でも、僕は文章を書く勉強をしなければならないと思い立ち、手を伸ばしてしまったのが本書というわけである。
本書の内容としては、文章表現から文章構造や心理描写など多岐に渡ってわかりやすい解説と、著名な作家の引用を用いているので、読んでいるだけでも自然に文章表現などの理解が進むような工夫がなされている。
本ブログでは僕が今後意識して身につけていこうと思った箇所をメモ替わりにまとめさせていただき書評にかえさせていただく。
文章表現や文章構造は自分で進んで学ばなければ身につけることができず、知る機会もない。
文書を書く機会の多いかたや文章がもっとうまくなりたいと思っている方は、この手の本を進んで読んでおくことをおすすめする。
【僕が今後身につけたい文章表現など】
「手を抜くと文が長くなる」
どんな文章を書けば短くてすむのだろう。1つには、とかく表現を飾りたがる悪い癖を直すことがまず必要だ。そして基本的には、1つの分では1つのことを述べるという原則に立つことである。1つの分に多くの情報を詰めこみすぎないようくれぐれも気をつけたい
「見知らぬ読者になりすます」
見知らぬ読者になりすまし、日ごろ考えている文章点検の基本的なモデルを以下に簡潔に示す
・内容がしっかりしているか
・表現意図がきちんと伝わるか
・すなおな文章になっているか
・文中に混乱や不統一な点はないか
・表現や体裁は適切か
「上りと下りは勢いが違う」
文の配列上の工夫野中で、叙述の進行とともにだんだん盛り上がるように文を並べるのが、「漸層法」と言われるテクニックである
この意味(こころ)がわかるかい。わかるだろう。わかるべきだ。わからなければおよねさんは人間(ひと)しゃない。鬼か蛇だ。わかれ。
井上ひさし『小林一茶』
「もう読まずにはいられない」
書き出しの一行はその作品に招じ入れる玄関のような機能をはたす。
冒頭と結末が照応し、全体が整然と脈絡の通るような書き出しがある。「或日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた」と書き出し、「下人の行方は、誰も知らない」と結ぶ『羅生門』や、「禅智内供の鼻と云えば、池の尾で知らない者はない」と書き出し、「長い鼻をあけ方の秋風にぶらつかせながら」と結ぶ『鼻』など、芥川龍之介の作品に例が多い
「さいごに」
名文や名表現は、長時間にわたって真剣に考えたからといって必ず出てくるものではない。が、だからといって、何もせずにぶらぶらしてきた人間に偶然訪れる僥倖のようなものとも違う。生きた文化遺産とも言うべき名分を手本としながら、そこからさまざまな表現法や生きた文章力を学び取るのは、やがて名表現が飛び出す土壌としての潜在知識を豊かにするためなのだ。その意味で人事を尽くす必要がある