【書評】『格差の起源』オデット・ガロー・NHK出版
人類の発展の起源を探る旅
オデット・ガロ―が、人類の発展に対して経済と人類の歴史にスポットを当て解説しているのが本書である
実際に読んでみると経済学者らしく根拠が数字で展開しており、一つ一つの人類の発展に対しての疑問点を根拠を数字で説明し、解決していきながら、さらにその奥にある根拠を探っていくというストーリーとなっており、理解がしやすくかつ面白みもあった
人類の歴史は30万年に及ぶものであるが、それを現在まで体系的にまとめている構想力は素晴らしい
本書は「格差の起源」という命題であるため、人類の発展があることが前提となる
そこで人類がどういう理由で繁栄し格差が生まれたのか、
そしてその格差の根源はどこなのかを探る旅である
人類が生まれたときから現在までの人類の発展を解き明かし、それをもとにして現在の格差はどこに原因があるのかを人類が生まれた過去にまた遡っていくという構成になっている
過去→現在→過去という人類の歴史をダイナミックに描いている
歴史から学べること
本書は人類の格差の原因を探っていくものではあるが、それを通じて人類の普遍的な繁栄をするにはどうしたら良いのかを教えてくれる
その中で一つのキーワードとなっているものの一つに「多様性」がある
「多様性」は現在、ジャンルを問わず非常に重要視されているキーワードの一つである
人類の繁栄に「多様性」は重要な価値を与えてきたという著者の主張は、現在ともマッチングしており、歴史的にも根拠があるというエビデンスを与えてくれた
そしてこれこそが歴史を学ぶ最大のメリットなのが、「多様性」に対するデメリットも歴史が示してくれていることだろう
“人間の多様性は、生産性を促進もすれば阻害もする可能性がある。だから、社会の多様性が相対的に高かったり低かったりすると、それが結果に及ぼす悪影響を緩和する措置がとられないかぎり、経済の繁栄が損なわれかねないが、多様性は適度であればその繁栄を促進する。とりわけ、多様性の高まりが革新性に与える影響が減っているときや、均質性の高まりが社会の結束に与える好影響が減っているときには、多様性をほどほどの水準にすることが経済発展につながるだろう”
と多様性に対するデメリットにも言及がされている
歴史を学ぶ最大の意味は過去から現在を知ることにある
人類の発展と繁栄の歴史を学ぶことで、そのデメリットとしての「格差の起源」はどう生じたのか、その全容が気になる方は本書を手に取ってみて欲しい