【書評】『歴史からの発想』堺屋太一著・日経ビジネス人文庫

賢者は歴史に学び、愚者は体験に従う

歴史に関する本は数多いが堺屋太一さんの著書は非常に好きでよく読んでおり、その一冊が今回ご紹介する『歴史からの発想』である

本書のすごいところは、歴史に対して全体を俯瞰しているところだと思う

日本史でも著者は戦国時代が一番詳しいことは明らかであるが、その時代の世界の歴史も詳しくその関係性にも深い洞察がある

歴史の本は往々にして全体をまとめると非常に退屈だが、時代を限定しすぎると全体の流れが理解できない

その絶妙なバランスをとっているのが著者だと思う

織田信長の考察は読むべき

本書の内容で一番力が入っているのは戦国時代であり、その中でも織田信長に焦点が当てられている

この織田信長の考察は非常に面白く勉強させていただいた

この部分だけでも読む価値はある

詳しい内容は本書で楽しんでいただければ幸いだが、一つ言えることは、織田信長とは日本史全体を見渡しても例外中の例外の人物だということだ

それほど日本人として考えても信じられない発想をし、そしてそれらを実行した

織田信長は日本人だったのかという話さえあがるほとだ

著者もこう語っている

“織田信長という人物の言動と業績を見ると、この男が本当に日本人であったのかどうか、疑いたくなってくる。彼の評価と判断と行動は、ことごとく日本人の心情的伝統と常識とを裏切っているのである”

日本史上、もっとも例外的な人物とその考察を是非味わっていただきたいと思う