【書評】『江戸の秘密』竹村公太郎著・集英社
【本書の読みどころ】
江戸時代に大流行した絵浮世絵
その代表的人物の一人が歌川広重である
その代表作である『東海道五拾三次』『名所江戸百景』から、江戸時代の我々の祖先がどう生活していたのか、そしてその当時の環境問題や日本人としてのアイデンティティは何かを、著者が浮世絵から解き明かしている
浮世絵から様々な江戸の秘密を解き明かす内容で飽きずに一気に読めて、しかも面白い
お勧めの一冊だ
浮世絵から江戸時代の謎を解く
本書は歌川広重の浮世絵から、江戸時代の人々の生活や、その当時の社会問題などを明らかにし、どのようにそれを乗り越え、現在の発展を支えたのかを、謎解きミステリーとして構成したものである
誰でも楽しく読めるし、非常にわかりやすく書かれているにも関わらず、日本の歴史を深く知ることができる良書だ
著者はもともと現在の国土交通省の公務員である傍ら、日本の地形についての研究をされていた方であり、いわゆる専門の研究者という肩書ではない
今でいうオタク的な位置づけになると思うのだが、それが好きでずっと研究し続けた結果、このような面白い著書を出版し、研究成果が世の中に出ることはとても嬉しいことで、皆さんも共感できるはずだ
『水を制する者は国を制す』
詳しい内容は本書で楽しんでいただければと思うが、本書の中心的な話は江戸の治水事業についてだ
徳川家康が江戸に移された時の状況は、湿地帯が広がるどうしようもない土地であった
それをどう今の大都市まで発展させたのか、それは徳川家康の治水事業にある
古くからの格言に『水を制する者は国を制す』という言葉があるが、正に水を制した徳川家がその後の260年の繁栄の基礎を作ったのである
もう一つ個人的に面白かったのは吉原の遊郭が江戸時代に日本堤に幕府の命令で移されたのだが、なぜ日本堤という土地だったのかという理由の考察は必読だ
僕自身は今まで浮世絵にそんなに興味がなかったが、じっくり観てみたいと思ったし、何より『東海道五拾三次』『名所江戸百景』で描かれた場所を実際に旅行で巡ってみたいという目標ができた
皆さんも『江戸の秘密』を覗いてみて欲しい