【書評】『目的への抵抗』國分功一郎著・新潮社
【お勧め読者】
20代などの若い方が読むとしっくりくると思う
日本人が書いた哲学を学びたい方
コロナの行動自粛について哲学的な考えを知りたい方
【本書の読みどころ】
コロナが5類に移行し、いつもの日常に戻りつつある
コロナによる行動自粛は我々に何をもたらしたのか、そしてどんな影響があるのか
それを哲学者の立場から読み解く一冊
フランス人と違って日本人の先生なので理解しやすく楽しく読める一冊だ
【さらに理解を深めるために】
『バカロレアの哲学』坂本 尚志(著)日本実業出版社
コロナ禍の行動自粛は我々に何をもたらしたのか
本書は著者からコロナの行動自粛について哲学的な観点からの評価をまとめた一冊である
そして本書で著者は、本書の活用について語っている
「本書が、読者の皆さんが自分でものを考えるにあたり気軽に手に取ることのできる材料の一つになることを願っている」
本書はコロナ禍をひとつのケーススタディと捉えて、考察してみて欲しいとの願いが込められている
今回のコロナ禍で一番の題材にしているのは「行動自粛」についてだ
著者は行動自粛について問題提起をしたイタリアの哲学者アガンベンの主張を取り上げて、行動自粛が我々に何をもたらしたのか、そして今後何をもたらすのかをわかりやすく体系化されている
詳しい内容は本書に譲るが、行動の自由を侵害することは人間とは何かの本質的な事柄に関わる大きな問題であり、コロナだったから仕方ないと一辺倒な考えではいけないと主張されている
改めて人間の自由とは何かを今一度、ひとりひとりが考える良い機会だったと思う
哲学の役割
哲学を勉強する意味を著者について
「テンプレートに留まることなく考えを進めていけるようになることこそ、哲学を勉強することの意味の一つだと僕は思っているんです。なぜならば、哲学というのは基本的に問いを立てて、その問いに概念をもって答える営みだからです」
と語っている
そして、哲学者の社会的な役割についてプラトン著の『ソクラテスの弁明』を引き合いにてこう語っている
「哲学者というのは社会(ポリス)にとってチクリと刺してくる虻のような存在であり、チクリと刺すことによって人々を目覚めさせる役割を担っているというわけです」
虻は人間にとって煙たがれ、嫌われる存在である
それをわかった上で社会に対してチクリと問題提起をする
そこに哲学の大きな存在がある
哲学を比喩する表現として非常にわかりやすいと私は感動した
哲学は主にフランスで発展した学問であり、日本人のわれわれとしては中々なじみがない学問である
そして、哲学書もフランス人が書いた本が多いことから、ただでさえ理解が難しい哲学において文化や歴史の違いから、さらに理解するのが難しくなる傾向があると私は思っている
そんな中で日本人の文化・歴史をわかった日本人が日本人向けに哲学を教えてくれるのは非常にありがたいと思うし、哲学に対する理解がまた一歩進んだと感じている
哲学とはいえ気軽に読める内容となっているので是非手にとってみて欲しい