【書評】『知的生産の技術』梅棹忠夫(著)・岩波新書
1969年出版の本とは到底思えない
本書は1969年に出版されたもので、今でいう“自己啓発本”である
50年以上前に書かれたものなので役に立つのかと思ったが、今読んでも全く違和感なく読めた
さすが自己啓発の名著と言われるだけのことはあると感心した
自己の成長というテーマはいつの時代も変わらない、本質のテーマだからだろう
メモを取ることの重要性とそれを成立させる整理術
本書の主題となっているのは「メモをとることの重要性」だ
「メモとること」に関しては様々な自己啓発書で述べられていることであるので理由については本書に譲るが、おそらくメモをとることのみならず、それを体系化しシステム化した初めての人が梅棹氏だと思う
少なくともこれ以上古い本で言及している本は僕は知らない
自己啓発本で本書を引用している本も数多いことからもそうであろう
そして、僕が一番学ばせていただいたのが、「メモの整理術」だ
いくらメモをたくさん残したところでそれを活用する必要がある
しかし、その活用はすぐに出番がくるとは限らない
よって、必要な情報を必要な時にわかるようにする必要がある。つまり整理しなければメモは役に立たないのだ
また整理と整頓の違いについても梅棹氏は言及している
“整理というのは、ちらばっているものを目ざわりにならないように、きれいにかたづけることではない。それはむしろ整頓というべきであろう。ものごとがよく整理させているというのは、みた目にはともかく、必要なものが必要なときにすぐとりだせるようになっている、ということだとおもう”
“世のなかには、一見乱雑にみえて、そのじつ、まったく整理のいい人がいる。逆に、本や書類を整然とならべているくせに、必要なときにはないもでてこないという人もある。整理がよくて整頓のわるい人と、整頓がよくて整理のわるい人とがある、というわけである。
整理は、機能の秩序の問題であり、整頓は形式の秩序の問題である。やってみると、整頓よりも整理のほうが、だいぶんむつかしい。たとえば、書斎のなかをきれいに整頓することは女中でもできるが、整理することは主人でないとできない”
秀逸である
知的生産の大家
本書は知的生産に対する梅棹氏の提案書である
内容はメモをとる方法から、その整理方法、そして読書の重要性や文章を書くことの重要性など多岐に渡っている
これらは昔も今も重要性は失われていない
むしろ情報が氾濫している現代こそ重要性は増していると言えるだろう
梅棹氏は本書のおわりにこう語っている
“このシステムは、ただし、まったくの未完成のシステムである。社会的・文化的条件は、これからまだ、目まぐるしくかわるだろう。それに応じて、知的生産技術のシステムも、おおきくかわるにちがいない。ただ、その場合にも、ここに提示したようなかんがえかたと方法なら、十分適応が可能だとおもうが、どうだろうか。”
是非、一読していただき適応しているか確認してみて欲しい