【書評】『組織サバイバルの教科書 韓非子』守屋淳(著)・日本経済新聞出版社
【韓非子と論語】
本書は中国の古典中の古典のひとつである『韓非子』の中で組織論の部分を中心に解説をした一冊となっている。
『韓非子』は同じく中国の古典である孔子の説いた『論語』と比べられることが多い。
すなわち、論語は性善説に基づいた統治を説き、韓非子は性悪説に基づいた統治を説いたものというものであり、日本人の価値観としては論語が受けいれられやすく、韓非子はあまり人気がないのが現状だと思う。
著者は韓非子の必要性について、以下の通り論語と比べ必要性を以下の通りまとめている。
・徳を身につけられるか、身につけ続けられるかは、個人の問題になってしまう。このために必須は個人の意思が揺らぐと、根本も揺らいでしまう危険性がある
・上司と部下の関係が、「徳と信頼」という絆でしか結ばれていないため、何かあればコントロールできなくなる。上司の暴走もそうだが、部下の暴走も止めにくくなる
・先輩や、お世話になった人には特に逆らいにくくなる
こうした問題への解決策として登場するのが、韓非に代表される法家の思想であり、その代表が『韓非子』なのである。
【組織論からみた韓非子の2つのポイント】
今回は私が本書を読んで組織論としてみた韓非子のポイントが2つあると思うので簡単にまとめておこう。
ポイント1:人の本性は「弱さ」にある
韓非の場合、「人は信頼できない」という前提をもとに組織を作ろうとした。一方で孔子は「人を信頼する」ことで組織を作ろうとした。
この2つの違いを著者は孔子との対比でこのように説明を加えている。
孔子:人は教育によって良くも悪くもなる
韓非:人は置かれた状況によって良くも悪くもなる
つまり、韓非は人の本性は「弱さ」にあると考えているのだ。つまり、
「状況次第で、多くの人は自分の弱さにあらがえなくなる。ならば、逆にその性質を利用して、組織や国がまわるシステムを作るべきだ」と、考えたのが韓非ということになる。
ポイント2:信用できるのは「成長する力」か「結果」か
韓非の組織論としての考え方は「信用できるのは結果だけ」という考え方を前提にしている。
一方で孔子の場合、まず信用すべきは「人の成長する力」ということになる。人は教育によって良くも悪くもなる、つまり人は成長できるという前提にたっているのだ。
いわば、完全な結果主義の組織を韓非は目指していたと著者は述べている。
そして、実際に結果だけが評価基準の組織をうまく作ることで、乱世のなかで抜群の力を発揮するという例は、古今の歴史を見ても数多くあり、その象徴が、韓非の思想を取り入れて中国統一を果たした秦にほかならないと指摘している。
【どちらの考えを理解して生かすことが大事】
『韓非子』と『論語』は比較しやすく、比べて語られることが多い。
比較しやすいということは、どちらも極論であるとも言える。どちらも主張がわかりやすく、明確なので比較しやいのだ。
現実の国の統治や会社組織でみると、韓非の考えだけでも、孔子の考えだけでも成り立たない。
つまり、どちらも理解した上で状況により、使い分けることがもっとも重要だと思う。
そのための教材として、『韓非子』と『論語』は必須の古典であり、学ぶ価値の高い書籍である。
ビジネスパーソンならば学んでおいて損はない。
是非、読んでみて欲しい。
「国を治める道とは、寛大さと厳しさ、その中庸をとることにある」呂蒙正