【書評】『絶対悲観主義』楠木建 著・講談社+α新書
ネガティブとポジティブ
物事をポジティブではなくネガティブにみることの利点を解説している本書を読んで心に安心感が生まれたのが正直な感想だった
まず、「絶対悲観主義」とは何かということだが、
“「世の中は甘くない」「物事は自分に都合のいいようにはならない」、もっと言えば「うまくいくことなんてひとつもない」これが絶対悲観主義です。
ただの悲観主義ではなく「絶対」がつくところがポイントです。仕事の種類や性質、状況にかかわらず、あらゆることについてうまくいかないという前提を持っておく。何事においても「うまくいかないだろうな」と構えておいて、「ま、ちょっとやってみるか・・・」。これが絶対悲観主義者の思考と行動です”
と著者は語っている
また絶対悲観主義の効用を著者は6つ挙げているのだが、その利点の一つに「悲観から楽観が生まれれるという逆説にある」ということを指摘している
まさに本書の肝となるところであると感じた
誰もが経験があると思うが、悔しいことや悲しいことを体験する時は必ず前提に相手に対する期待がある
その期待が踏みにじられるからこそ、悔しかったり悲しくなったりするのである
その前提を悲観で見ておけば悔しいことも悲しいこともない、よって逆に楽観的になれるということだ
こう考えるとポジティブとネガティブは本質的には同じなのだということを教えてくれている
鋭い分析力と読者への姿勢
絶対悲観主義の定義と効用の残りは、「幸福の条件」「健康と平和」「お金と時間」などの読者のニーズが高いものについて鋭い分析力を持って自分なりの考えをまとめている
読んで感じたのは著者の素直さと読者への正直さだった
絶対悲観主義であるがゆえに自分の失敗や弱さを隠すことなく伝えている文章には心を動かされる
“仕事である以上、論文や本の文章はお客さまにとってわかりやすく、面白いものでなければ意味がない”
と著者は本書で述べている
最近、ブログで文章を書き続けているからなのかこの言葉に感銘を強く受けた
「絶対悲観主義」というタイトルからは想像できないが、読み終わると自然とポジティブになっている、この不思議な本だと思う
なんでもポジティブでなければならないことに真っ向から疑問を投げかけ、ネガティブの効用を淡々と説く本書はとても面白い
興味を持たれた方は是非読んでみて欲しい
僕と同じ不思議な感覚とポジティブさが湧いてくるだろう