【書評】『超訳 易経 陽 ~乾為天~』竹村亞希子(著)・新泉社
【最も古く難解な古典「易経」】
本書は古典の中でも一番古く、難解とされている易経の解説本となっている。
難解な易経の中でも「陽」にあたる龍の成長物語である「乾為天」だけを取り上げ解説しているのが特徴である。
僕自身は易経は占いの類だと思っていて初めてまともに易経にふれたので、わからないところも多く、理解をすすめるには長い時間を要することだけはわかった。
本書ではこのような文章がある。
「経書の中で、易経だけは現在の学問ではまだ、意味や解釈がほとんど定まっていない。経書の中でもいくつかの書物は、時代とともに学問が進んでだいぶんわかるようになってきたが、易経だけは相変わらずだ」
ということからも今の僕がこの本をまとめる力はないことは明らかであるので、本ブログでは僕が参考になった、「6つの龍の話」と「易経の基礎知識である時中」について取り上げておこう。
【乾為天 龍の話~潜龍から亢龍~】
本書のメインは乾為天の「龍の話」の解説であり、大きく6つの段階に分かれている。
その6つを確認しながら僕が参考になったところに解説を加えておこう。
第1段階:志を打ち立てる「潜龍」
「今は世の中を変えることができなくても、評価されなくても、悩んだり、くよくよしたりしない。また、いくら正しい考えで意見を言っても相手にされず、世間の片隅に追いやられても不平不満や愚痴を言ったりもしない。これが潜龍の心構えです」
第2段階:師となる人物に見習う「見龍」
「修養の場にある見龍は、時間を捨てて一心不乱に学ぶことだ」
第3段階:失敗に学び、日進月歩する「乾龍」
「乾龍は反復の道なりと易経は教えています。毎日、毎日、反復することでプロとしての自覚が芽生えてきます。そして、引き受けたことをきちんとやり遂げていく中で、問題意識や、問題を発見する能力が高まります。そして繰り返し反復継続することで、かならず技の創出へと到達することができると教えています。ここでようやくプロとしての水準に達するのです。」
第4段階:飛躍の機をとらえる「躍龍」
「躍龍には、飛龍になってかならず志を実現するという自信と、何の力もなかった潜龍の時の謙虚さ、その両方が必要なのです。不安もなく、自信を持ちすぎると、過信してしまい機をとらえられません」
第5段階:雲を呼び、雨を降らす「飛龍」
「飛龍は天に在って、雲を呼び、雨を降らせて万物を養う。能力を発揮し続けるために、まわりの人、物、事に学びなさい」
第6段階:驕り高ぶる龍の顛末「亢龍」
「驕り高ぶり、昇りつめた龍は必ず後悔する」
易経はこの6段階を繰り返すと教えてくれている。
自分がいまどの段階にいるのか、そして何をしなければならないのか、それを教えてくれているのである。
詳しい内容は本書を参考にしていただければ幸いだ。
【易経の基礎知識である「時中」】
それでは最後に易経の基礎知識である「時中」について取り上げておこう。
なぜこれを取り上げたのか、著者はこう語っている。
「時中とは、原理原則の軌道に乗るための出処進退、身の処し方なのです。そして時中を能動的に実践することを「中する」といい、原理原則を体得するには「中する」ことが大事であり、これが易経の本懐といえます。」
「時中」とはその時にぴったりのという意味があるとのことだ。
そして、その時にぴったりであるのが重要であり、季節でいえば、春は暑くもなく、寒くもない、ちょうどいいのは「中」であり、夏は、暑すぎるぐらい暑いのが「中」となります。
夏が涼しいのは「中」ではないということがポイントで、どんな状況であれ「時中」にあった行動をしなさいということだ。
調子が悪い時に無理をするのは「時中」ではなく、ゆっくり休養するのが「時中」に合っているということだ。
「時中は“その時にぴったりのことをすることで時が通る“という意味で、つまり解説策です。」
時中にあった行動は簡単なような難しい。
それも易経は教えてくれているのだ。
あとは自分自身で本書を読んで確かめて欲しい。
僕も今回、易経をはじめて触れてすごく興味が湧いた。
今後さらに深く学んでいこうと思うので、進展があれば改めて取り上げてみたい。
【さらに理解を深めるために】
『超訳 易経 陰 ~坤為地ほか~』竹村亞希子(著)・新泉社