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【書評】『JAL再生 高収益企業への転換』引頭麻美(著)・日本経済新聞出版社

 
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【本書の読みどころ】

2009年のJAL経営破綻からわずか2年8ヵ月という短期間で再建を果たしたJAL

会社更生手続きを採用しての再建であったが、上場企業で再建を果たしたこれまでの企業の最短は約7年であったことからもある種の奇跡といってもいいかもしれない

その理由を詳細なデータと取材から浮き彫りにしているのが本書である

JALが会社更生法の適用をしてからの緊迫感や覚悟、社員が変わり会社が変わっていく過程を詳細に知ることができるので、会社の経営分析の教科書替わりに使えるほどだと思う

何がJALを変えたのか?

JALの変革の第一は経営の代表に稲盛和夫を置いたことであろう

本書を読んで改めて確信したが、会社の変革のほとんどはTopで決まるということである

会社の代表として稲盛さんが会社・社員の変革を先頭を切って実施したことが一番の原因である

また、JALは巨大な組織で完全な縦割り構造になっていた

そのような組織では「個別最適」が蔓延する

つまり、自分の働いている組織だけが最適ならば問題ないという考えに陥りがちだ

JALの再生に関してのもう一つのポイントは、「全体最適」という考え方を早期に浸透させたことにあると思う

「全体最適」の視点を持つリーダーを「横のリーダー」という表現をしているが、部分では最適でも全体で最適ではならないという視点を育てたことが組織構造を変え、JALの体質にも変革をもたらしたのである

JAL再建の成功要因5つのポイント

この2つが私自身としてはJALの再建に対して大きな力になったと思っている

本書ではJAL再建の成功要因として5つのポイントとしてまとめてあるのでご紹介しておこう

1.衆目にさらされての再生

2.稲盛氏のリーダーシップと社内の共感

3.価値観を共有する仕組みや仕掛け

4.社員が共有できる管理会計の仕組み

5.新しい価値化に基づく社員ひとりひとりの行動

となっている

本書ではアメーバー経営の手法も取り入れられており、その過程も詳細に記載されている

会社再建の手法は本書のまま活用することも可能だろう

説明できない400億円のコスト削減

このようにJALは大幅な構造改革を果たしたことにより、短期間の再建を果たした

その中でコスト削減としては、更生計画による1363億円の削減に加えて、604億円のコスト削減が追加実施されている記録が残っている

このうち約200億円は、計画を上回る人件費削減効果である。しかし、残りの400億円は、その具体的な内容が明らかになっていない

本書の最大のテーマはこの400億円の追加削減の謎を解くことにある

その理由は何なのか、本書で明らかになっている

読み物としても面白く、経営や企業改革の教科書としても有効な一冊となっているので興味の持たれた方は一読をお勧めする

【さらに理解を深めるために】

『経営12カ条』稲盛和夫(著)日本経済新聞出版

『生き方』稲盛和夫(著)サンマーク出版

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