【書評】『ハーバードの個性学入門』トッド・ローズ著・早川書房
【お勧め読者】
個性学とは何かを知りたいかた
個性を活かすとはどういうことなのか?どうすれば活かすことができるのか知りたい方
自分の個性を大事にしたい方
【本書の読みどころ】
近代になり、平均主義という考えが世界に浸透した
それにより、組織学などが発展し、効率性や生産性が最も重視されるようになり現在に至っている
その対極に位置するのが個性学であり平均主義とともに発展してきた概念であるが、これからは個性が重要視される時代になっている
平均主義の始まりと発展、そして個性学の要諦を一冊にまとめられた良書である
【さらに理解を深めるために】
平均の発明と組織学の発展
本書は個性学という学問を体系的にまとめたものであり、個性学という学問が生まれた前提である平均主義についての歴史や詳しい考察が加えられている良書である
まず平均主義だが天文学で発展していた平均という概念を社会に適応したことから始まる
これが現在の組織学を飛躍的に発展していくことになる
詳しい内容は本書に譲るが、平均主義の発展により「個人の標準化」「マネージャーの誕生」「有能者と低能者の概念」ができることになる
これらにより、特に工場などの産業の分野で飛躍的に効率性が高まり生産性があがることになる
個性の三つの原理
本書では個性には三つの原理があり
第一の原理:バラツキの原理
第二の原理:コンテクストの原理
第三の原理:迂回路の原理
の三つである
すなわち、平均と同じ個人は存在しないし、特別の状況によって個人は変化し、進歩は人それぞれ全く違うということである
著者は個人を活かす方法として以下のように語っている
「自分のさまざまな個性のそれぞれにどの経路がふさわしいのか正しく判断できてこそ、正しい道を歩むことができる」
自分の能力・才能を最大限に伸ばすために
本書では個人の能力を最大限に活かすためにはどうすれば良いのかに対して、個性が失われてしまった歴史とその仕組み、そして個性学という学問からその特性と現在にどう活かしていくのかを体系的にまとめられている
内容と質ともに素晴らしく、本書の参考文献が42ページに及んでいるところからも他の同じような書籍と比べて群を抜いている内容であろう
非常に良書であるので一度は目を通してもらいたいと願っている