【書評】『卵でピカソを買った男』山田清機著・実業之日本社
【本書の読みどころ】
本書はイセ食品を設立し、鶏卵販売業として国内トップに立ち、アメリカでもナンバーワンの座を獲得した伊勢彦信さんの半生をまとめたものになっている
残念ながら、イセ食品は2022年3月に会社更生法の適用となってしまったが、「森のたまご」という圧倒的なブランドを築きあげたのが伊勢彦信さんだ
そして伊勢彦信さんはカリスマ的な社長でもあったようだが、強烈な美術品コレクターでも知られており非常にユニークな面を持っている
いかにも明治から昭和の社会や文化を大事にした昔の社長という感じである
様々な困難を乗り越えて、鶏卵販売業としていかに国内トップに立ち、アメリカでもナンバーワンになれたのかのヒントが本書にはある
目的と目標に対する徹底的な分析と実行力、そして日本人にそぐわない考え方や人間性と男としての器を知ることがきる
鶏卵業界を根本から変えた人物として今後も語り継がれる人間なので、知らなかった方はこれを機会に知ってもらいたいと思う
【さらに理解を深めるために】
『成功はゴミ箱の中に』レイ・クロック ロバート・アンダーソン(共著)日本経済新聞出版社
兵(つわもの)どもが夢の跡
本書は日本の鶏卵業界を根本的に変えた人物として知られる伊勢信彦の半生を記者がまとめたものになっている
現在家庭で毎日新鮮な卵を食べることはできるのは、この伊勢信彦のおかげである
つまり、卵の大量生産と新鮮さを保ったままで食卓まで届ける仕組みを一代で作り上げた人物である
そして、美術品のコレクターとしても有名な人物である
明治から昭和にかけての社長は、会社は社会のため、文化のためにあるという認識が強かった
そのような背景で会社が美術品を買い集めて、デザイナーを支援したりするのは当たり前だったらしい
その考えが伊勢信彦氏もあったと思われ、本書の中でこう語られている
「格好をつけたい、人に自慢したいという気持ちがなければ、世界的なコレクションなどとうてい起こるものではありません。日本という国を、そういうバカをほめたたえる“大人の社会”にしていかなくてはなりません」
私も共感できる。企業は社会のために存在していることを忘れてはならない
残念ながら2022年にイセ食品は会社更生法の適用を受けることになった
その後を継いだ経営者も大変だったと思う
本書を読んでいると創立した伊勢彦信氏はまさにカリスマであり、彼だからここまで会社を大きくできたんだとわかる
会社の継続は自分の人生を超えて続くものであり、自分がいなくなった後のことも考えて会社作りをしなければ真に社会のためになる会社とはならないことを、本書と会社更生法の適用のニュースを読んで感じた
鶏卵業界を根本的に変えた人物として僕の心に刻んでおこうと思う