【書評】『リバプールのすべて』結城康平(著)・ソル・メディア
【リバプールとマネーボール理論】
19-20シーズンのプレミアリーグを制したリバプール。
そのウラにはサッカー最先端の理論があり、その内容と全貌を解き明かしたのが本書となっている。
僕はサッカーは全くやらないのだが、息子がサッカーをやっており、息子が読んでいた本なのである。
サッカーの素人いうこともあり、サッカー自体は詳しくわからないことをご了承いただければ幸いである。
さて、現代のスポーツのほぼすべてに当てはまっていると思うが、データと統計の世界で成り立っているのが現実だろう。
ありとあらゆるものをデータ化し、最適解をアルゴリズムで探しシステム化しているのである。
それは世界的なスポーツであるサッカーではなおさらだ。
リバプールというチームは野球メジャーリーグの「マネーボール理論」をいち早くサッカーに取り入れ、その後のサッカー界に大きなインパクトを与えた。
その秘密を解くのが本書の目的である。
なお、「マネーボール理論」自体については詳しい説明は省かせていただこうと思う。
わからないという方はググってもらうか、映画の『マネーボール』をご覧いただきたい。見る価値のある映画だと僕は思う。
【マネーボール理論の進化と限界】
リバプールの戦術については、いわゆる「ゲーゲンプレシング戦術」が有名なようである。
そして、リバプールの19-20シーズンに活躍された選手たちの詳しい紹介もされているのだが、そこはサッカーの素人いうことで割愛させていただこう。
今回は「マネーボール理論」とサッカーについての部分を中心に掘り下げてみたい。
当時のサッカーは欧州で圧倒的な人ン期を誇っているものの、データ分析は、野球を中心としたアメリカのスポーツと比べて遅れていると言われていた。
そして、野球の統計データマニアをフットボールの世界にいち早く本格的に取り入れたのがリバプールというチームであり、プレミアリーグを制した原動力となった。
そして現代では、詳細なデータ分析と統計分析により、「ゴール期待値」やポジショニングの質を可視化する新指標である「OBSO」などがシステム化され各チームでしのぎを削っているのだ。
こう考えるとデータ分析と統計分析を駆使し、チームにとって最適な選手を当てはめ補強したり、選手に対して戦術を共有するノウハウは非常にすぐれており、問題がないように思える。
しかし、サッカーの世界では「マネーボール理論」の限界は僕にはあるように思える。
それは、サッカーは選手個人の能力の比重が非常に大きいスポーツだからだ。
本書でもところどころに記載があるのだが、例えば選手のトレーニングや食事については、統計的なデータでのベストよりも、選手個人に合っているのかを重視する方がよい結果が出ているようである。
「リバプールのトレーニングはデータ重視ではなく、選手に寄り添った実地主義的なもの」としているし、食事についても「特定の食品を禁止しない」という思想がある。
つまり、リバプールが最大限に気を配っているポイントは2つあり、1つはフィジカルトレーニング、もう一つは選手個々の徳j制に合わせた食事メニューの構築なのである。
現代スポーツは統計データは避けて通ることのできないものになっている。
それでもプレーするのはあくまで選手であり、選手個人の能力がデータを凌駕する場合が高いのがサッカーなのだと思う。
【本書の所感】
本書はリバプールの強さの秘密を解説したものとなっている。
リバプール好きならば読んだこともあるし、当然知っている情報ばかりだと思う。
しかし、サッカーに興味のない方にも「マネーボール理論」の実用と現実に適応する場合の問題点など読んでいて非常に面白かった。
読み物としても面白いので機会があれば是非手に取ってみて欲しい。
【さらに理解を深めるために】
『統計学が最強の学問である』西内啓(著)ダイヤモンド社