【書評】『賭けの考え方』イアン・テイラー&マシュー・ヒルガー(著)・フジタカシ(訳)パンローリング
【賭け事の思考習慣を体系化した良書】
本書は賭け事の中でも世界中で共通なものであるポーカーの本となっている。
しかし、プレイヤーとして成功するために必要なポーカーの思考習慣をまとめたものであり、全ての賭け事に応用可能であることがご理解いただけるだろう。
賭け事に関する本は数多くあるのだが、内容はゲームの攻略法を主にしており実際に再現性がない場合がほとんどである。
しかし、本書はあくまで「思考習慣」を解説しそれに基づいた賭け事の行動を説いたものであり、賭け事のみならず、人生にも通じる不変の心構えを説いている毛色の違う内容となっているので一度は読んで損はない本となっているので参考にしていただきたい。
本ブログでは、本書の内容の中で僕が重要だとチェックした箇所についてまとめておこう。
すなわち、「賭けの考え方」「才能を乗り越える」「ティルト」の3点である。
【賭けの考え方】
ポーカーで成功するために必要な思考習慣は以下の7つである
1.ポーカーのさまざまな現実を理解し受け入れる
2.長期的視野でプレイする
3.金を儲けることよりも正しい決断を下すことを優先させる
4.金への執着を捨てる
5.自尊心を持ち込まない
6.あらゆる感情を決断から排除する
7.分析と改善のサイクルを継続的に繰り返す
以上の7つであるが、1つ目の「ポーカーかのさまざまな現実を理解し受け入れる」に関しては内容がわからないと思うので以下に簡単にまとめておく。
他の賭け事にも共通する現実であることから、ポーカーを他の賭け事に当てはめて読んでもらうとわかりやすいだろう。
・ポーカーは技術と運が共存するゲームである
・短期的には運が物を言う
・長期的には実力が物を言う
・ポーカーは利幅の小さいゲームである
・ポーカーは分散の大きいゲームである
ポーカーの思考習慣について心理状態の詳しい解説や具体的事例について本書で体系化されているので一読してみて欲しい。
【才能を乗り越える】
ポーカーを理解するためには「普段と少し違う考え方をしなければ、最高の結果を得られない」という局面を見極める必要がある。その局面とは以下の6つであり、簡単に解説も加えてまとめておこう。
1.作用と反作用の相関は非常に弱い
勝っているからといって上手くプレイしているとは限らないし、負けているからといって下手にプレイしているとは限らない。ポーカーのプレイとその結果との関連性を求めるときは、本当に多くの試行の結果をみつめなければならない
2.短期的な金銭の目標を設定することは非生産的である
広義にはポーカーで目標をたてることは良い場合もあるが、けっしてそれが金銭的な目標であってはならない
3.ポーカーにおいて平均ラインは許されない
あなたがポーカーで平均的なプレイヤーならば、あなたは金を失っている。ポーカーという事業において、平均では事足りない
4.リスクに対して取るべき賭けの考え方は中立な考えのみである
日常生活でリスクに対してどんな考え方をもっていようと、ポーカーテーブルにおいてはリスクに中立な考え方をもたなければならない
5.欲は善である
ポーカーのプレイ中は、欲は悪であるという理屈は全て捨て去らなければならない。ポーカーにおいて欲は許容されるどころか必須要素だ
6.筋の通った考え方が必要である
ポーカーをプレイする際の問題は、全ての決断が重要であり、筋の通らない考えが少しでもあれば、その分金を失ってしまう
【ティルト】
まずは、ティルトとは何かということであるが、「自分のプレイ能力を下回るプレイをする行為」と定義されている。
ティルトのプレイに対する影響やインパクトについては以下の通りである。
・ティルトはプレイが何らかの形で劣ってしまうことである。必ずしも大きなプレイの変化を伴わない
・ティルトがゲームに及ぼすインパクトはいくつかの要因による。すなわち、「タイプ」「深刻さ」「期間」「ゲームの種類」である
長期的な勝ち組になるための技術的スキルを備えているプレイヤーは多いが、正しい賭けの考え方を身につけていないために長期的な成功を達成できない。要は、勝ちを全てティルトで溶かしてしまうということである。
そしてティルトになる可能性を最小限に抑えるステップは以下の通りである。
・バンクロールを適正に管理する
・プレイするときを慎重に選ぶ
・記録をつけない
・それぞれの決断を個別に扱う
・相手に対して正しい賭けの考え方で臨む
以上となる。
そのほかにも様々なポーカーに対する重要な考え方とその対策を具体例を用いて説明してくれている。
是非、一度手にとってみて欲しい。
【さらに理解を深めるために】
『確率の考え方』マシュー・ヒルガー(著)・フジタカシ(訳)パンローリング