【書評】『白洲次郎 占領を背負った男』北康利(著)・講談社
【従順ならざる唯一の日本人~白洲次郎~】
「戦前、近衛文麿、吉田茂の知遇を得る。戦後は吉田茂の側近として終戦連絡事務局次長、経済安定本部次長、貿易庁長官を歴任、日本国憲法制定の現場に立ち会った。また、いち早く貿易立国を標榜し、通商産業省を創設。GHQと激しく対峙しながら、日本の早期独立と経済復興に、〝歴史の黒子〟として多大な功績を挙げた。」
これが本日ご紹介する人物のプロフィールである。
僕は白洲次郎が大好きで、この本はずっと手元に置いている。
白洲次郎は近代日本において大きな足跡を残した人物なのだが、歴史の表舞台にはほとんど出ていない。
むしろ、進んで黒子に徹するのを美学にしていたのだと、本書を改めて読み返して感じた。
今回は本書の中の白洲次郎の言葉をひろってみよう。
【白洲次郎の人間像】
・「戦争には負けたけれども奴隷になったわけではない。」それが彼の口癖だった
・「勝ち目がないとわかっていても、男には戦わねばならない時がある」
・「自分は必要以上にやっているんだ。占領軍の言いなりになったのではない、ということを国民に見せるために、あえて極端に行動しているんだ。為政者があれだけ抵抗したということが残らないと、あとで国民から疑問が出て、必ず批判を受けることになる」
・人事権を握って君臨しようとは毛ほども思っていない。その証拠に、次郎は仕事が成就すると、いつもその職をさっさと後進に譲っている。その潔さは誰も真似できないものであった。彼の生き方が実に格好いいのはここに理由がある
・「プリンシプルを持って生きていれば、人生に迷うことは無い。プリンシプルに沿って突き進んでいけばいいからだ。そこには後悔もないだろう」
【世界に誇るべき日本人の一人】
本書は白洲次郎の一生をまとめたものとなっている。
そして戦後の焼け野原から、今の日本の平和を命がけで造った方たちの物語である。
本書にはその時代の全ての息づかいが聞こえてくる。
白洲次郎を知らない方にはこれを機会に是非知っていただきたいし、戦後、日本の未来のために命を尽くした方たちの生き方を本書で感じて欲しい。