【書評】『【エッセンシャル版】マネジメント 基本と原則』P・F・ドラッカー(著)上田惇生(編訳)・ダイヤモンド社
【P・F・ドラッカーの名著のエッセンシャル版】
本書はドラッカーの名著の一つである『マネジメント』のご紹介だ。
原書は2冊構成のかなり分厚い本ではあるが、エッセンシャル版という重要な部分のみをまとめている本があり、はじめて読む場合はこちらがおすすめだ。
エッセンシャル版とはいえ、かなりの分量と内容のため心して読もう。
内容としては、マネジメントにおける使命・方法・戦略の3部に分けて構成されている。
内容的かなり難しいのでここでは本書の全体像のイメージを持ってもらうことを目的として説明させていただこうと思う。
各論の部分は本書を読んでご確認いただきたい。
【マネジメントの三つの役割】
マネジメントの三つの役割として著者はこうまとめている。
①自らの組織に特有の使命を果たす。マネジメントは、組織に特有の使命、すなわちそれぞれの目的を果たすために存在する
②仕事を通じて働く人たちを生かす。現代社会においては、組織こそ、一人ひとりの人間にとって、生計の糧、社会的な地位、コミュニティとの絆を手にし、自己実現を図る手段である。当然、働く人を活かすことが重要な意味を持つ
③自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する。マネジメントには、自らの組織が社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題の解決に貢献する役割がある
マネジメントとは組織の中核に位置するものであり、組織の目的を果たし、個人の自己実現を果たし、社会に貢献する役割がある。
それでは次に、私が本書を読んでみて重要だと思った、企業の目的とそこから導き出される三つの結論についてみてみたい。
【企業の目的から派生する三つの結論】
企業の目的について著者はこのようにシンプルな結論に至っている
「企業の目的の定義は一つしかない。それは、顧客を創造することである」
この定義から三つの結論が導き出される。
まず、一つ目として、企業の使命の意義が導き出される。
『「顧客が誰か」との問いこそ、個々の企業の使命を定義するうえで、もっとも重要な問いである。やさしい問いではない。まして答えのわかりきった問いではない。しかるに、この問いに対する答えによって、企業が自らをどう定義するかがほぼ決まってくる』
企業の目的は顧客の創造である。よって企業の使命は「顧客が誰か」という答えで決まってくる。
そして、二つ目として、企業の基本的機能が導き出される。
「企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす」
と著者は結論づけている。
最後に三つ目として、企業の管理的な機能が導き出される。
「顧客の創造という目的を達するには、富を生みべき資源を活用しなければならない。資源を生産的に使用する必要がある。企業の管理的な機能の経済的な側面が生産性である」
「近年、生産性を論じる人は少なくない。生産性の向上すなわち資源の活用が成果を左右し生活水準の向上をもたらすことは、もはや常識である」
現在盛んにいわれている「生産性」の重要性をこの時代に指摘しているところが恐ろしい。
【組織のマネジメントについて】
最後に組織のマネジメントについて著書で論じているところを簡単にまとめておこう。
まず、組織の対象を大きく二つに分けている。すなわち、
・株式会社
・公的機関
である。そして、組織の構造について五つの分類をしている。
また、会社内の組織について、
・マネージャーの役割と資質
・自己管理
・コミュニケーション
の三つをまとめており、特に自己管理については「自己管理による目標管理こそ、マネジメントの哲学たるべきものである」と指摘している。
以上のようにマネジメントに対する多岐にわたる内容を体系化しまとめており、名著といわれる所以である。
詳しい内容は是非本書を読んで学んでみて欲しい。
特に若い人達が読んでおくといいと思う。この経験は必ず自分の将来に役立つだろう。