【書評】『チーズはどこへ消えた?』スペンサー・ジョンソン(著)・扶桑社
【本書の読みどころ】
本書は二匹のネズミ、「スニッフ」と「スカリー」と二人の小人、「ヘム」と「ホー」のチーズを探す物語となっている
物語の中心は「変化にどう対応するのか?」である
現実世界は変化に満ちており、変化に対応することが不可欠だ
しかし、変化に素早く対応する人もいれば、その変化を受け入れられず(物理的・精神的にも)変化に翻弄される人もいる
この物語を読むことで客観的に変化に対応することはどういうことなのかを理解することができる
自分自身が変化に対してどのような反応をするのかを客観的に知り、変化に対してどうすればよいのかが、たとえ話を通して体験できる良書である
変化すること・変わらないこと
本書は人それぞれに大切にしているものや概念を「チーズ」に例えて、その状況が変化した場合にどういう態度をとるのかが客観的に理解し、体験できる物語となっている
「変化に対応すること」は誰でも理解している重要テーマだと思うが、実際に自分自身がその変化に対してどう対応しているのかをしっかり把握できる人は少ないと思う
それがとりわけ自分自身にとって大事なものであればなおさらである
変化に対しどのような心構えでいればいいのか、そのポイントは以下の3つである
1.変化は常に起きることを想定すること
2.状況が変化したなら自分自身を変化さえるしか解決策はないことを知ること
3.変化に対して早く対応をとること(変化を楽しむことがカギ)
今、私たちがいる世界は人類史上最も変化が早い時代を生きている
そして、この変化の速さはさらに加速するだろう
自分自身に対する戒めのためにも本書で変化する重要性を学び直してみたらいかがだろう
最後に私の感想であるが、この物語は不完全だと思っている
というのも、この登場人物でイメージできると思うが、二匹のネズミはチーズが無くなった瞬間に変化が現実になったことを受け入れて、次のチーズを探す行動をとり状況に合わせて、自分自身を変化させて次のチーズを手に入れることができた
この本ではネズミが出てくるのはここまでなのである
常に状況によって変化することは、状況に右往左往し続けることに他ならない
それも一つの問題だと私は思う
この物語は二人の小人が変化を受け入れられず困り果てた結果、一人は自分を変化させ一人はそこにとどまり続けた話であり、しかも変化した小人の話だけで完結されている
これでは変化することだけが美化されている印象になってしまっている
物事には表と裏がある
表と裏、どちらにも言及があって初めて本書の物語は完結できると私は思っている