【書評】『世界は贈与でできている』近内悠太(著)・ニューズピックス

【贈与をめぐる物語】
本書は現在の資本主義社会の対比として贈与とは何かを哲学的に掘り下げ、その関係性について体系化した一冊となっている。
私は哲学書を読むのが好きでよく読んでいるのだが、哲学書の問題点をひとつ取り上げておこう。
哲学というのは一つのテーマに対して深堀していき、人間の本質を探ろうとする学問だと思っている。
本書のテーマは「世界は贈与でできている」という命題を掘り下げていき、著者の結論が述べられている。
よって、哲学書という代物は書評に基本的に向かない(というよりそのまでの能力がまだない)。
本の解説をすることは著書の全てを説明しないと結論が同じでも違った解釈になる可能性があるのだ。
これはある意味では哲学書の宿命ともいえ、一つの命題の答えに対して著者の論理的な思考を辿っていくのが哲学だからである。
ここでは本書に対して概略だけをご紹介し、そこに辿り着くまでの論理はあなた自身で確認し、理解を深めて欲しい。
【世界は贈与でできている理由】
まず、世界は贈与でできていることを考える上で必要なのは、贈与の定義をはっきりさせることだろう。
本書では贈与の定義をこう説明している。
「僕らが必要としているにもかかわらずお金で買うことのできないものおよびその移動」
であると定義した。
そして、本書の結論はこうだ。
『市場経済のシステムの中に存在する無数の「すきま」そのものが贈与である』
重要なところの解説を加えると、資本主義とは、ありとあらゆるものを「商品」へと変えようとする性質を持っている。
そして、その商品は交換され続け資本が限りなく大きくなるというシステムなのだ。
その前提として、あらゆるのものが「商品」でなければならず、「金で買えないもの」はあってはならないことになる。
というのが著者の考えであり、そのお金で交換することができないすきまを埋めているのが贈与というわけである。
そして、贈与こそがこの資本主義社会を少しでもよりよくする鍵なのである。
これが著書の答えとなっている。
この説明だけでは理解できない部分も多いと思うが、興味を持っていただけた方は是非本書を読んでみて欲しい。
このような説明しかできないことが心苦しいが、哲学とはそういうものであるとご理解いただき、ご了承いただけると幸いである。
僕も成長して、このような本の書評をうまく説明できるように努力していこうと思う。
【さらに理解を深めるために】
